着用することが当たり前のようになったマスク。
一時期は、マスク不足で入手が困難でしたが、今では、ほとんどの取り扱い店舗に並び、価格も安くなってきています。
マスク不足で困っているときには、洗って何度も使用されていた方もおられることと思います。手に入らないのだから仕方のないことではありますが、不織布マスクを洗濯しても問題はないのでしょうか。
何回洗って使えるのでしょうか。
今回は、そのようなことを考えてみたいと思います。
不織布マスクの外箱に、「3層構造」や「高性能フィルター使用」「99%ウィルスカット」などの記載を目にされた方も多いのではないでしょうか。
医療用マスクや家庭用マスクについては、性能についての企画規定がありません。そのため、各メーカーごとに表示や広告内容にばらつきがあり、消費者に誤解を与えてしまうというケースが起こったため、一般社団法人日本衛生材料工業連合会がマスクの「表示・広告自主基準」を策定し、施行しています。
しかし、そこでも必須記載項目は明確にはされていません。
ですから、外箱に記載されている「3層構造」や「高性能フィルター使用」「99%ウィルスカット」などは、メーカーのいわゆる広告なのです。
99%カットと書かれていたら、性能が良いのかなと思いますよね。その類というわけです。
もちろん、99%カットしないのに記載することは許されていません。数値を記載する場合には、試験方法や試験機関を表示することが前提です。
ということは、私たち消費者は、表示内容に惑わされることなく、マスクを選ぶ必要があるわけです。
一般的に市販されている不織布マスクのほとんどが3層構造です。
一番外側に光触媒加工不織布。
真ん中にフィルター(静電気帯電フィルター)。メルトブローンと呼ばれます。
顔に当たる一番内側に柔らかい不織布。
光触媒とは、光エネルギーを利用しておこる分解反応のことです。紫外線にあたると、雑菌や有害ガス、ニオイ分子等を無害な水と炭酸ガスに変えてくれます。紫外線さえあれば、どこでも反応し、半永久的に効果が持続するものです。
このことから、マスクの一番外側、紫外線にあたる部分には、光触媒加工された不織布が使われることが多いのです。
それでは、何故ほとんどの不織布マスクが3層構造なのでしょうか。
キーワードは、ブラウン運動と静電フィルター効果です。
まず1層目の光触媒加工により、ある程度の雑菌などは無害な水と炭酸ガスに変わります。
生き残ったエアロゾロはブラウン運動をしていますので、なかなか繊維の目を超えることができません。
ブラウン運動とは、液体や気体中に浮遊する微粒子が、不規則に運動する現象のことです。簡単に言うと、フラフラユラユラしながら飛んでいるということです。
針に糸を通すとき、糸がピンと張っていないと、なかなか通しにくいですよね。そのようなイメージです。
それでも繊維の目をくぐってきたエアロゾロに、今度は静電フィルター効果が立ちはだかります。
静電フィルター効果とは、その名の通り、静電気の力でエアロゾロをはねつける効果のことです。
ただし、静電フィルター効果は湿気に弱いです。
マスクの内部は外気より湿気がこもった状態になっています。
湿気がこもった状態が続くと効果も減少します。
少しでも菌やウィルスの侵入、または飛沫を抑えるために3層構造になっているのです。
5層構造や、逆に2層構造という不織布マスクもあります。
光触媒加工が施されているものを何度洗ってもその効果は持続するという結果が出ているようですが、マスクに施されている光触媒加工が、どの程度のものなのか。
おそらくメーカーによっても違うでしょうから、私が効果は持続すると言い切ることはできません。
ただ、本来に光触媒加工は洗っても効果は持続するそうです。
静電効果となると、前述の通り、湿気に弱いです。洗った後、きちんと乾燥させることで復活します。
効果が変わらないのだったら、洗って何度でも使えると思われた方も多いでしょう。
ところが、問題は絡み合った繊維の目なのです。
不織布はおむつなどにも使用されるくらいですから濡れても問題はありません。
不織布についての詳細は、また別の機会にご案内しますが、繊維を織ったり編んだりせずに、繊維自身の性質を利用してランダムに重ねた繊維を接着剤や熱などで成形されています。
洗濯をする(洗う)となると、当然、軽くでも押し洗いや揉み洗いを施すことになると思います。
その際に、少しずつ繊維が破壊されていきます。
面白い実験で不織布マスクを8回洗ったら、繊維が避けてきたというデータがありました。
エアロゾロを防ぐための不織布が避けてしまっては意味がありません。
また、同じ実験の際に、不織布の表面に付着したごみは洗っただけでは取り切れなかったという結果も出ています。
つまり、洗濯した不織布マスクを着用するということは、ごみがついた非衛生的なマスクを着用しているということになるのです。
品薄でマスクがどうしても手に入らないというときに、苦肉の策として、洗濯して使用するというのは、いたしかたないことかもしれません。
けれども、口を覆うマスクです。
マスク着用の際にも手洗いが推奨されているほど、衛生面では気をつけなければなりません。
不織布マスクは使い捨てしましょう。
マスクを捨てる際の留意点は、マスクの正しいつけ方をご参照ください。